書籍流通

出版業界の現状

(商業ルートをご希望される方に)

商業ルートに乗せることをご希望のお客様に留意していただきたい事柄です。

別項でも明記いたしましたが、長年、出版業界で編集者として、著者として関わったリブパブリ代表の河合信和は、安易な商業ルート乗せをお勧めしません。

◎ローマ水道橋.JPG

出版業界の現状について

出版不況と言われ、年々4~5%ずつ売上高の落ち込む出版業界の現況と取引慣行を解説する。

2009年、21年ぶりに2兆円割れした書籍・雑誌売上高。縮小傾向は、今も止まっていない。書籍売上は4%以上も減少したのに、出版点数は逆に増え続け、年間8万点前後に達する。その大半は、2000~4000部程度の刊行で、1万部を超える冊数を出し、かつ売り上げている本は1000点前後しかないと見られる。


大半が小規模零細である全国で約4300社と言われる出版社は、冊数が出ないので、経営を維持するために刷り部数を絞った上で点数だけ増やす。それが点数増、売上減という状況の背景にある。

小規模出版社の中には、人件費や営業経費を抑えるために、営業部門を持たず、編集部門だけで生きのびるという戦略を取るところも少なくない。その場合、発行と発売が分離し、発行出版社は手数料を払って発売元に出版物の流通を委託することになる。独立系では、比較的マージンの安い星雲社を選ぶところが多い。

リブパブリも、同社と契約する意向である。

疑問点

_Profile.jpg疑問①
出版社はどうやって自社出版物を書店に流すのか?
卸にあたる「取次」会社に委託している。20社程度あると言われるが、日販とトーハンが2大取次大手で、2社だけで全流通出版物の7割を扱っている。
_Profile.jpg疑問②
どうして取次が介在するのか?
講談社、集英社、文藝春秋社、新潮社などの大手も含め、出版社の抱える社員数は少ない。大手でも編集・営業・広告・総務を含めて数百人で、大半の中小出版社は数人程度だ。つまり、大手も含めて日本全国の約1万5000店(出版不況のため、この10年間で約5000店も減っている)の書店に、単独で本を流す人的余裕がない。
卸の取次にまかせるしかないのだ。そのため、出版社は取次に「口座」を開き、書店流通から売上代金の回収まで、全面委託している。そのために、書店は売れた出版物の定価の9%を取次に支払っている。最近は、返本された本にも、2%程度の手数料を取られるようになっている。
_Profile.jpg疑問③
取次は書店にどのように流すのか?
書店数は前述のように約1万5000店、出版社が出す本の平均的な刷り部数は2000~4000部程度だから、小さな街の書店までは当然、配本されない。取次も、効率を考えると、ジュンク堂、紀伊国屋書店などの大手書店チェーンに売れ筋の本を流すことになる。街の零細書店は、売れ筋本が来ず、ますます客足が遠のいて、苦しい経営になる。
つまり本を流すのは、取次の胸三寸であり、出版社や書店の希望が通ることはない。
_Profile.jpg疑問④
書店のマージンはどれくらいか?
平均で売上高の22%程度。たったこれだけのマージンしかなく、返本率(返本率の説明は後述)が40%以上にのぼっているので、経営は苦しい。10年間で5000店も減っている、これが理由だ。その代わり、書店は在庫リスクを負っていない。棚に並べても売れなかった本は、無条件に取次に戻せる(取次は最終的には出版社に戻す)。だから中古本以外、本の安売りは基本的には存在しない。再販価格制度で、制度的にも安売りは禁止されている。
在庫リスクがゼロで済むおかげで、大手書店チェーンのように、家賃の高い駅前一等地の書店でも低マージンで経営していられる。
ただ書店の側からすれば、売上が立たなければ利益を得られないので、売れ筋の本は欲しい。逆に売れそうもないと考える本は、棚にも並べない。並べておくだけで棚を占拠して、売れ筋機会のある本の場所を奪うからだ。よく言われる極端な例として、梱包されて取次から送られてきた本を中を開けずにそのまま返本する例もあるが、それはこのためだ。
書店にとって「売れない」と判断された本は、限られた棚を効率よく回転させるために、店頭に並べられないまま返本されるわけだ。自主出版は、ほとんどこのケースに該当するから、大手チェーン書店に実際に並ぶことは、まずない。
大手出版社以外、営業要員のいない小出版社にとって、よい棚を確保することは難しい。
逆に大手出版社の優秀な営業マンなら、手伝いと称して、店の陳列を手伝うふりをし、取次から送られてきた自社出版物を目立つ場所に並べてしまうこともある。書店の意向にかまうことなく、それのできる営業マンは、出版社にとって優秀とされる。
_Profile.jpg疑問⑤
返本率とは?
取次が書店に配った本のうち、売れずに取次(最終的には出版社)に戻された本の割合で、40%以上に達している。
出版社にすれば、ある程度、返本されることを覚悟しなければならないわけだ。そこで採算点を発行部数の60数%(返本は30数%)と考え、70%売れれば利益が出るように、刷り部数と定価を設定する。80%売れればけっこうな利益になるが、60%しか売れなければ赤字だ。返本率40%以上という現状では、多くの出版社の経営は苦しい。実際、最近では毎年70社以上が廃業し、新規設立数を廃業数が上回っている。
_Profile.jpg 疑問⑥
自費出版物が流通ルートに乗るには?
自費出版を扱う出版社は、取次に取引口座を開かなければならず、毎日の取次各社からの連絡もあるので、常勤の営業要員が必要になる。とても要員をかかえられないので、発売会社に委託することになる。「発行・○○社、発売・××社』の××社が、発売会社だ。
発売会社は、大手出版社の系列のもの、独立系などあるが、大手系列系は、取引条件が厳しい。
発売会社に委託すると、発売会社は発行会社から手数料をとって、ISBNコードとバーコードをつけ、取次に流してくれる。このマージンは種々の名目で定価の10%前後に達する。
  • 結論
  • 以上のことから、自費出版物を流通ルートに乗せても、前述したように大手チェーン書店の棚に並べられることは期待できない。
  • そもそもせいぜい1000部程度の配本数の本では、全国の書店に行き渡らない。出版社は、取次にどこそこの店に優先的に配本を、という権限がないからだ。
  • 取次は大手書店チェーンに主に流すだろうが、配本された書店は「自費出版だな、これなら売れない」と考え、棚に並べず、そのまま返本してしまう可能性は高い。
  • ただ注文があった場合は書店も応じてくれるから、著者がサクラを使って注文するということも行われているようだ。
  • もちろんアマゾンなどネット書店も、取次から本の供給を受けているので、アマゾンで検索して購入することは可能だ。一般に売れるとしたら、このルートしか考えられない。
  • かつて社会問題にまでなった悪徳自費出版社のセールストークに「あなたも印税生活をしませんか」という誘い文句があった。しかし前述した出版業界の現状からすれば、それはほとんど夢物語である。間違っても流通ルートに乗せて儲けようと思わない方がよい。
  • 逆の立場で考えよう。あなたがたまたま書店で自主出版の本を見たとしても、お買いになるだろうか。よほど興味深いタイトルと中身でなければ、手にも取らないのではないか。
  • プロの物書きが、取材を重ね、資料を漁り、文章に磨きをかけて本を出しても、よほどの有名人でない限り、前述のように刷り部数は1万部をいかない。仮に1万部を刷っても、重版されるのは、僅かだ。
  • リブパブリ代表者の河合のケースで言えば、新書以外の普通の書籍の刷り部数は、2000~3000部程度だった。刷り部数が少ないから、出版社は採算をとるために定価を高く設定するので、だいたい3000円くらい。それで得られる印税は、書き下ろしで10%、翻訳なら5%である。これで計算していただければ、とうてい印税生活などできないレベルであることがお分かりいただけるだろう。河合の場合、新聞社勤務で給与所得があったので、「道楽」ができたに過ぎない。
  • なお発売元(例えば提携予定の星雲社)は、発行出版社から種々の名目で、様々な手数料を要求する。それは、お客様負担となるので(全部売れない可能性も考えると、500部を流通ルート乗せにしても、20万~30万円の負担をお願いせざるをえない)、総合的に見て、「書店で売りたい」という希望にはお応えしない方がお客様のためと考えるのである。